・動物病院が休みで受診できない
・犬のケガって治し方は人と違うの?
・いざという時のために治療方法を知っておきたい
こんなお悩みを、今まで1,000件以上犬のケガを治してきた獣医のゆべしが解決します。
はじめに、これは軽いケガを治したり、応急処置をする方法をお教えする記事です。
全てのケガを治すものではありません。
どんなケガでも、動物病院にかかるのがベストであることは忘れないでください。
犬のケガの治療の基本は、患部をキレイにして毛を刈り、保湿することです。
こう思われる飼い主さんもいらっしゃいますが、今はケガにイソジンは使わないんですよ。
当記事では、犬のケガの治療について、飼い主さんでもできるように詳しく解説していきます。
それでは見ていきましょう。
✔目次
【犬のケガ】自宅でケアできる場合、できない場合
犬のケガと一口に言っても、その程度は様々です。
すり傷程度のこともあれば、広範囲の裂傷、傷口は小さいけど深いケガなど様々です。
まず、犬のケガが自宅でケアできるものかどうかを判断しましょう。
【犬のケガ】自宅でケアできる場合
犬のケガで自宅で治療できるのは、軽いケガか応急処置です。
例えば次のような時ですね。
・すり傷や切り傷
・肉球の浅い裂傷
・爪切り時の出血
・深い傷や出血の応急処置
軽いすり傷、切り傷なら自宅でのケアで完治させることも可能。
爪切りでの出血を早く止める方法はこちら↓の記事をどうぞ。
(執筆中)
【犬のケガ】自宅でケアしきれない場合
自宅でケアしきれないケガも、もちろんあります。
次のようなケガの時は、救急病院を探してでも必ず動物病院へ行きましょう。
飼い主さんが思っているよりケガが深かったり、自宅でのケアだけでは不十分な可能性が高いです。
・やけど
・眼球のケガ
・口の中からの出血
・ボタボタたれる出血
・全身にわたるケガ
・化膿しているケガ
・手足を貫通するようなケガ
・犬猫による噛み傷
・落下や衝突など全身に衝撃のあるケガ
特に注意することを以下に書いておきますね。
・やけどや眼球のケガは一生残ることがあります。
取返しのつかないこともあるので、自宅での治療は望めません。
・犬猫の噛み傷は、化膿しやすいので抗生物質が必要です。
・強い衝撃のあと、72時間以内にショックを起こすことがあります。
ショック予防のための治療は必ず受けて下さい。
ケガではなく骨折を疑う時はこちら↓の記事を参考にして下さいね。
【犬のケガ】汚れを水で洗いましょう
犬のケガを見つけた時、最初のケアは「汚れを取りのぞくこと」です。
汚れや雑菌をそのままにしておくと、化膿する確率がグッと上がります。
流水でもバケツにためた水でも構いません。
まずは真水でキレイに洗い流しましょう。
現在の医療では、「真水で十分に洗い流せば消毒は必要ない」という考え方が主流です。
イソジンやアルコールでの消毒はケガの治りを遅らせ、傷跡を残してしまうので、汚れが取りきれない時だけ使うようにしてください。
全身を冷やすと免疫が落ちてケガが治りにくくなります。
寒い時期はぬるま湯で洗いましょう。
【犬のケガ】出血がある場合は圧迫止血
犬のケガを洗い流した後も出血している場合は、キレイなガーゼなどで押さえましょう。
ガーゼがなければキレイなタオルや手ぬぐい、ない場合はティッシュでも可です。
にじむ程度の軽い出血なら、2~3分で止まるはずです。
出血の範囲が広い時や、出血が止まりにくい場合には、氷のう(氷を入れた袋)を作って短時間当てるのも効果的です。
血管が冷やされて縮まるので、止血効果がありますよ。
長く当てすぎると冷たいし血流を止めすぎてしまうので、1~2分を目安に。
ボタボタたれるような出血は、包帯を巻いて止血が必要です。
犬に包帯を巻いて止血する時は、こちら↓の記事を参考にしてください。
包帯を巻いた後は、できる限り早く動物病院へ。
【犬のケガ】できるだけ毛を刈りましょう
犬と人のケガの治療で、1番違うところかもしれないですね。
ケガに毛が入ってしまうと、ケガに雑菌を入れているのと同じです。
広い範囲を刈る必要はありませんが、ケガに入る毛だけでも刈りましょう。
犬用バリカンが理想的ですが、なければハサミで皮膚を切らないよう少しずつ切ってくださいね。
もし犬用バリカンの購入を迷っているなら、Panasonicの犬用バリカンが最高の逸品です。
コードレス、水で丸洗いできる、皮膚を切りにくいのに毛に対しては切れ味抜群。
市販品でこれ以上のものはないです。
でもケガを治すために買うのはちょっと高いので、買わなくて大丈夫です。
ハサミで切る場合は徹底的に根元まで切らなくても、切れるところまででOKですからね。
ご自宅のハサミが切れないようなら、小さくて切るのが大変かもですが、眉毛用のハサミなどが切りやすいです。
皮膚を切らないよう少しずつ切りましょう。
【犬のケガ】乾燥しないよう保湿する
犬も人も、ケガは保湿することで治りが早くなります。
消毒をせず保湿する治療のことを「湿潤療法(モイストヒーリング)」と呼びます。
飼い主さんから時々聞かれる質問ですが、乾燥させるよりも保湿した方が絶対治りは早いです。
その理由はこちら。
・白血球という雑菌を倒す細胞が集まりやすい
・肉芽というケガを治す組織が増えやすい
・湿らせた方が痛くない
以前はイソジンつけて絆創膏を貼るのが主流でしたが、これは傷口を乾かしてしまい、治りが遅いことが証明されています。
【犬のケガ】保湿して本格的に治す方法
犬のケガを保湿して治すには、テーピングが最適です。
傷口に塗り薬(軟膏)をつけただけでは、すぐに乾いてしまいますし、舐めとられてしまう可能性もありますからね。
薬を塗って、保湿できるドレッシング材というものを当て、テープで巻いておくのがベストです。
上のこちらの記事には、犬のテーピング方法が詳しく書いてありますので、参考に巻いてみてください。
犬のテーピングはかぶれることがあるので、かぶれてしまった場合はこちら↓の記事をどうぞ。
ケガに巻いたテーピングは1日1回、少なくとも2~3日に1回は交換しましょう。
【犬のケガ】保湿して手軽にケアする方法
上の本格的に治す方法よりも、簡単にケアする方法もあります。
治療効果は本格的なものより落ちますが、お手軽なので試す価値あり。
白色ワセリンを塗り、サランラップで巻きましょう。
白色ワセリンとは皮膚を保護する精製油のことで、保湿力が高い上に副作用もありません。
市販されているので、薬より安価で手に入れやすいのもメリットですね。
ただ、犬では毛があるためサランラップがぴったりと張り付きません。
サランラップを巻いた後に、落ちないようにさらにテープを巻く必要があります。
テーピングの記事でも紹介していますが、シルキーテックスという商品は動物病院でも使われているので、使いやすく安心です。
サランラップもギュッと巻くとうっ血する(血が止まる)ので、強く巻きすぎないよう注意です。
こちらもできれば1日1回、少なくとも2~3日に1回は交換しましょう。
【犬のケガ】キズパワーパッドはおすすめしない
動物病院でよく聞かれる質問ですが、犬のケガにはおすすめしません。
人のケガだと良く治るんですけどね、キズパワーパッドも湿潤療法ですし。
貼ってみてもいいとは思いますが、毛があるためにピッタリ張り付かないですし、すぐ剥がれてしまいます。
キズパワーパッドの上にテーピングすれば取れなくはなりますが、すぐに張り替えるので価格が高くなるのもデメリットですね。
人だとキズパワーパッドは5日ほど貼りっぱなしにしますが、犬で5日も貼っておくと雑菌をケガに留めるので化膿してしまいます。
【犬のケガ】犬にケガを舐めさせない
昔は「犬のケガは舐めさせとけば治る」なんて言われましたが、断固として間違いです。
犬がケガを舐めると、口内の雑菌がケガについて悪化しますからね。
エリザベスカラーを使ってテーピングを取られたり、ケガを舐めるのを防ぎましょう。
犬のケガを自宅で治療する基本的な方法:まとめ
ここまでの話をまとめます。
・自宅で治せる犬のケガは軽いものか応急処置
・ケガを水で洗い、消毒はしない
・出血があれば圧迫止血
・ケガに入る毛はできるかぎり刈る
・患部は保湿する
・エリザベスカラーを使ってケガを舐めさせない
紹介した治療方法は、初心者でもできるけど内容は本格的なものです。
人のお医者さんの治療と、ほぼ同じ内容ですから。
犬のケガは、毛さえ切れればあとは簡単なんですよ。
毛を切れる子であれば、おうちでの治療もパパッとできてしまいます。
なにより、おうちで治療できるようしつけをしておくことが大事かもしれません。
参考になれば幸いです。