動物病院

犬の歯石除去に麻酔を使うのは危険?むしろ無麻酔の方が危険だよ!

犬の歯石除去は無麻酔で行うと危険
飼い主
飼い主
・犬の歯石除去をするか迷っている
・麻酔して処置と麻酔なしでの処置、どっちがいいか分からない

こんな悩みに、獣医のゆべしがお答えします。

ゆべし
ゆべし
歯石除去なら絶対に麻酔をかける方をおすすめします!

僕はこれまで、無麻酔で歯石を取った犬のトラブルに何度もあっています

どんなトラブルかというと、歯石が取りきれていなかったり、歯槽膿漏で抜いた歯の一部が残っていたり、さらにはアゴの骨が折れた犬を3例も見ました。

無麻酔で歯石除去を行うと、雑な結果になったり、最悪の場合ケガを負うこともあるのでオススメしません

大事なことなので繰り返しますが、犬の無麻酔での歯石除去は絶対にやめた方がいい!です!

日本小動物歯科研究会も、無麻酔での歯石除去には否定的な意見を出してますからね。
公式見解のPDFデータも出しています。

この記事では、歯石除去の方法と、麻酔ありと麻酔なし、それぞれの歯石除去のメリット、デメリットを解説しています。

最後まで読んでもらえると、あなたの愛犬にとって最適な歯石処置を知ることができますよ。

それでは、解説していきましょう。

犬の歯石ってなに?

犬の歯石除去をしようとする画像

歯石とは、歯垢(プラーク)と雑菌がからまったバイオフィルムという膜に、唾液に含まれるカルシウムやリンが加わって石のようになったものです。

バイオフィルムというと聞き慣れないかもしれませんが、犬が食事した後は、お皿がヌルヌルして洗っても落ちにくいですよね。あのヌルヌルがバイオフィルムです。

犬は口の中がアルカリ性(人は中性)なため、虫歯ができない代わりに歯石がつきやすい体質。

人よりも犬の方が早く歯石がつくので、歯石が原因となる歯肉炎や歯槽膿漏を起こしやすい動物なんです。

犬の歯石除去って?

犬の歯石除去用器具

犬の歯石除去は、歯についてしまった歯石を物理的に取り除くこと

犬は人のように「じゃあ、口開けてください」なんてできませんので、麻酔をして無意識のうちに歯石除去を行うか、無麻酔で保定をして行うかのどちらかになります。

犬の歯石除去はどんな時に必要?

飼い主さんが気付くことのできる、犬の歯石除去が必要なケースは以下のとおりです。

  • 歯が汚れている
  • 口のにおいが臭い
  • 歯がグラグラしている
  • 歯が勝手に抜けた(乳歯以外)

特に、歯が勝手に抜けたら歯槽膿漏がかなり進行していますので、歯石除去を考えた方が良いです。

定期的に動物病院で歯石除去を行うのが理想的。

犬の歯石除去は自宅でもできる?

ゆべし
ゆべし
大声で叫びたい。自宅で歯石除去はできませーーん!

動物病院でしかできないってウソついて、儲けたいとかじゃないんです。

犬の歯石がこのジェルで消えた!1日1回この商品をスプレーするだけで歯石が消えます!なんていう詐欺商品が多いので、だまされる飼い主さんを減らしたいのです。

歯石をつきにくくするケア商品はOKですが、歯石が取れます!とうたっている商品は絶対NGなのでご注意ください。

ゆべし
ゆべし
人も歯医者さんで歯石取るのに、
自宅で歯石溶かしてる人なんて見たことないですよね。

歯石は予防はできるけど、犬でも人でも、一度ついてしまった歯石は歯科器具で物理的に削らないと落とせないんですよ。

犬猫のデンタル商品を開発しているビルバックジャパンのHPでも、同じことが言われています。

最近は、自宅で歯石を取る飼い主さんも増えてきたようで・・・

上のような犬用の歯石除去器具も市販されていますが、自宅で使うのは絶対にやめた方がいいです。(リンクの商品も買わないでください)

使い方によっては凶器になります。
スケーラーは刺さりますし、力加減を間違えれば歯が欠けることも。

犬は飼い主さんをキライになるかもだし、ケガするリスクもあり、歯石が取り切れず、すぐに歯石がつくので良いことなんか一つもないです、マジで。

動物病院での犬の歯石除去

動物病院での犬の歯石除去

では、実際の動物病院ではどのように歯石除去をしているか、詳しく解説していきましょう。

この解説は、麻酔をした状態での処置内容になります。

飼い主
飼い主
歯石除去の方法なんて知りたくないよ?

って方もいると思いますが、なぜ無麻酔で歯石を取っちゃいけないかを解説するのに必要なので、2分だけお付き合いください。

①歯石を割っていく

犬の歯石が大きい場合には、まず鉗子やペンチなどで歯石を割ります

飼い主
飼い主
え?歯石を割って歯は傷つかないの?

と思うかもしれませんが、歯の表面のエナメル層は歯石よりずっと硬いので傷つきませんし、歯石だけを挟んで割るので心配はいりません。

②歯石をスケーラーで取る(スケーリング)

大きな歯石が取れたら、次に残った歯石をスケーラーという器具で取り除いていきます

ほとんどの動物病院で使うのは超音波スケーラーという、スケーラーの先が細かく振動する機械式のもので、振動によって効率的に歯石を取り除けます。

ちなみに、超音波スケーラーは歯肉に当てても傷になりません。


市販されている超音波スケーラーだとこんな感じですね。
(しつこいようですが買わないで下さい。)

手動のスケーラーでも歯石は取れますが、手動式には3つデメリットがあります。

  • 口内をケガするリスクがある
  • 時間がかかる(麻酔が長くなる)
  • 超音波スケーラーほどキレイにならない

上記の理由から、超音波スケーラーの方が歯石除去には有効ですよ。

③歯肉縁下の歯石を取る(ルートプレーニング)

目に見えている歯石が取れたら、さらに目に見えない部分の歯石を取っていきますが、これをルートプレーニングと呼びます

歯肉縁下とは、歯の根っこ(歯根部)と歯肉の間にあるスキ間のことで、歯肉炎を起こすと歯周ポケットとも呼ばれますね。

歯肉縁下を解説する画像
引用:ストローマンパートナーズHP

実は目に見える歯石よりも、歯肉縁下の歯石の方が歯肉炎や歯槽膿漏の原因になっていることが多いんです。

なので、歯石除去をするならルートプレーニングを徹底的にやらないと意味がない

歯肉縁下の歯石は、放っておくとアゴの骨を溶かしたり、膿をため込んで根尖膿瘍という病気を引き起こすことも。

歯肉縁下の歯石除去は痛いので、意識がある状態ではできません。

④悪くなった歯を抜く(抜歯)

歯石除去から少し話がそれてしまいますが、④のルートプレーニングをしているとグラグラの歯が見つかることがあります。

グラグラの歯は、残しておいても犬にとっては痛みが残りますし、歯周病の原因になるので抜いた方がベター

どうしても歯を抜きたくないという場合は、大学病院や専門医にかかると歯を温存する治療を受けることもできます。

⑤歯をきれいに磨いていく(ポリッシング)

最後の仕上げに、歯をゴム製の回転ブラシ(ラバーキャップ)で磨いていきますが、これをポリッシングと呼びます

なぜ磨くかというと、歯石を取った歯の表面はザラザラしていて、細かい凸凹にすぐに歯石がついてしまうから。

せっかく歯石を取ってキレイにしたので、長くキレイなままでいられるよう、表面をツルツルに仕上げるのがポリッシングです。

研磨剤を使って、徹底的に磨き上げることで歯石のつきにくいキレイな歯が維持できるんですよ。僕は時間の許す限り磨きます。

ちょっと長くなりましたが、これが麻酔をかけた歯石除去の方法になりますね。

無麻酔での犬の歯石除去の内容

無麻酔での犬の歯石除去

では一方、無麻酔で歯石を除去する方法は麻酔をする場合とどう違うのでしょうか。

僕が研修で見た動物病院でのやり方を参考に、麻酔をかける歯石除去との違いを解説していきます。

①犬を保定する

麻酔をかけていないので、意識のある犬を保定する必要があります。

犬は自分で口を開けてくれないので、開口器という道具を使って口を開け、処置を行います。

暴れる犬の場合、力づくになってしまうケースも見ましたね。
力づくで処置をして、その後2度と自宅でケアをさせてくれなくなったケースもあります

②歯石は完全には取れない

犬の意識がある状態では、歯石を完全に取りきれません

目に見える歯石はある程度取れても、歯肉縁下のルートプレーニングはできないし、痛みもあるのでやっちゃダメです。

上で説明した通り、ルートプレーニングができないと歯周病を防げません。

③抜歯はできないことが多い

無麻酔では歯根部の確認ができないので、歯がグラグラかどうかも分からず抜歯するかの判断もつかないことが多いです。

明らかにスポッと抜けそうな歯は抜いてしまう、という程度ですね。

ただし、抜歯後の出血もしにくいので、抜歯すること自体にリスクが伴います。

③ポリッシングも不完全

そもそも歯石が取りきれていないので、歯をツルツルにすること自体がムリ

犬のイヤがり方によってはポリッシングが全くできないこともあります。

歯の表面は凸凹のまま、歯石が再びつきやすい状態で歯石除去は完了となります。

ゆべし
ゆべし
研修先で無麻酔の歯石除去を見て、「ほんとにコレでいいのかよ」と疑問に思いましたね・・・

動物病院での犬の歯石除去にかかる料金

動物病院での犬の歯石除去にかかる料金

動物病院で歯石除去をする場合の料金を、麻酔した場合と無麻酔の場合で比較してみましょう。

各動物病院によって料金は変わりますので、あくまで参考程度としてください。

【麻酔をかける場合】犬の歯石除去にかかる料金

麻酔をかける場合の歯石除去の料金は、一般的に¥20,000~¥40,000程度が相場です。

犬の大きさによって料金が変わる動物病院もあるので、大型犬や超大型犬では¥50,000を超えることも。

また、抜歯をする本数や痛み止めの有無、高齢で麻酔中に点滴が必要など、オプションが追加されると料金も上がっていきます。

抜歯については、1本抜くごとに¥500~¥2,000(抜く歯によって変わる)加算されると考えてください。

【無麻酔の場合】犬の歯石除去にかかる料金

無麻酔での歯石除去の場合は、一般的に¥1,000~¥10,000ほどが相場です。

どれくらいの歯石を取るかによって、料金はかなり変わります。

無麻酔ですので、抜歯や点滴などのオプションが追加されることもあまりなく、料金は変動しないことがほとんど。

麻酔をかける犬の歯石除去のメリット・デメリット

麻酔をかける犬の歯石除去のメリット・デメリット

では、麻酔をかける犬の歯石除去のメリット・デメリットをまとめていきます。

麻酔をかける犬の歯石除去のメリット

麻酔をかける犬の歯石除去のメリットは、以下のようになります。

麻酔をかける歯石除去のメリット
  • 犬のストレスが少ない
  • ケガをするリスクがほぼない
  • 歯石がすべてキレイに取れる
  • 歯石除去後も歯石がつきにくい
  • 口の中にある他の問題も見つけやすい

最後の「他の問題を見つけやすい」とは、例えば口内にできた腫瘍を見つけるなどの診察がしやすいということ。

また、麻酔中に他の検査をする、小さなできものを取るなど、普段はできない処置も合わせて行うことができます。

麻酔をかける犬の歯石除去のデメリット

麻酔をかける犬の歯石除去のデメリットは、こんな感じ。

麻酔をかける歯石除去のデメリット
  • 料金が高い
  • 麻酔自体のリスクがある

無麻酔で行う犬の歯石除去のメリット・デメリット

無麻酔で行う犬の歯石除去のメリット・デメリット

では、無麻酔で行う犬の歯石除去のメリット・デメリットはどうでしょうか。

無麻酔で行う犬の歯石除去のメリット

無麻酔での犬の歯石除去におけるメリットは、以下のようになります。

当たり前ですが、麻酔をかけて行うメリットと逆ですよね。

無麻酔での犬の歯石除去メリット
  • 料金が安く済む
  • 麻酔のリスクがない

無麻酔で行う犬の歯石除去のデメリット

無麻酔で行う犬の歯石除去は、デメリットが非常に多いです。

無麻酔での犬の歯石除去デメリット
  • 犬のストレスが強い
  • ケガをするリスクが高い
  • 歯石はキレイにとれない
  • 歯石除去後も歯石が再びつきやすい
  • 口の中の他の問題を見つけられない
  • 処置後、自宅での歯のケアをイヤがることが多い

口内を傷つけたり骨折するリスクが高いうえに、歯石もしっかり取れない。

自宅で歯のケアをイヤがるようになれば、将来的に歯周病になる可能性を増やしているとも言えますよね。

やはり、無麻酔での歯石除去はオススメできないと言わざるをえません。

無麻酔で犬の歯石除去をしても良いケースはある?

無麻酔で犬の歯石除去をしても良いケースはある?

では、無麻酔での歯石除去は絶対にしてはいけないのでしょうか?

ゆべし
ゆべし
無麻酔での歯石除去は、すべての犬の飼い主さんにオススメできません。

高齢で麻酔がかけられない犬には有効じゃないか!という意見もありそうですが、ちょっと考えてみてください。

高齢で麻酔するのも危ない犬を、押さえつけて歯石取るのって危険ですよ。

ましてや高齢の小型犬であれば、骨も弱くなってるのでアゴの骨を骨折するリスクも高いですし、僕は実際にアゴの骨が折れた子を診察しています。

高齢になった時、歯石が取りたくても取れない!なんてことにならないよう、日常的な歯石予防のケアをオススメします。

歯石予防のケアに関する記事はこちら。(執筆中)

犬の歯石除去:まとめ

最後のまとめを示す画像

では、ここまでの話をまとめていきましょう。

要点まとめ
  • 犬の歯石除去は麻酔をかけて行うのがオススメ
  • 無麻酔で歯石除去するとケガのリスクがある
  • ケガだけでなく、歯石も取りきれない
  • 歯石が再度つきやすい状態のまま
  • 大事なのは自宅での歯石予防ケア

僕は、いつも飼い主さんに処置前と処置後の写真を見てもらいますが、「えっ?こんなにキレイになったんですか!?」と驚かれます。

キレイになった愛犬の歯をなるべく維持しようと、自宅での歯石予防ケアを始める飼い主さんも多いですしね。

麻酔をかけての犬の歯石除去は、料金は高くてもケアを始めるきっかけとなったり、長期間の歯石予防効果があったりと付加価値の高い治療です。

一方で、無麻酔での歯石除去は無資格の人間も行うことがあり、リスクは計り知れません。

料金の安さだけに目を奪われず、内容のしっかりした処置を選んでほしいですね。

ABOUT ME
ゆべし
エキゾチックアニマルの治療施設で仕事する獣医、犬猫病院歴10年。獣医歴は14年目。犬の飼い主さんに、おうちでできるケアや治療についての記事を書いています。

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