ちょっと興味はあるけどいかにも怪しそう・・・
こんな飼い主さんの疑問に、オゾン療法を実際に行った獣医師のゆべしがお答えします。
オゾン療法という言葉を聞いた時の感想は、「うわぁ、うさんくさい」でした。
私はバリバリの西洋医学の申し子で、科学的根拠のない治療は信じないタチです。
そんなゆべしが、西洋医学では治せない症例に対し、オゾンを使用して実際に治療した経験を書き出しました。
結論としては、「ものすごく効果が出ることもあれば、全く効果がないこともある」です。
この記事を読んでもらえると、なかなか表に出ないオゾン療法の実際の効果や、治療する価値があるのかが分かります。
それでは見ていきましょう。
✔目次
犬のオゾン療法とは
なにそれ?
こんな飼い主さんのために、簡単に犬のオゾン療法について説明します。
【犬のオゾン療法】オゾンとは
オゾン(O3)とは、酸素の原子が3つくっついた分子で、酸素の仲間です。
地球のまわりを覆うオゾン層はオゾンがたくさん集まったもので、オゾンは空気中にもわずかに存在しています。
オゾンはすごく不安定な分子で、すぐに酸素原子(O)を出して酸素(O2)に変わります。
【犬のオゾン療法】オゾンの働きと効果
オゾン(O3)から出された酸素原子(O)が酸素にくっつくと、活性酸素というものが発生します。
活性酸素は本来体にとってストレスになるものですが、体は少しのダメージを受けると、ダメージをはね返すために強くなろうとするのです。
軽いストレスやダメージが逆に体を強くする効果を、ホルミシス効果と呼びます。
オゾン療法はこのホルミシス効果を利用した治療で、活性酸素ストレスで体を強くする治療ですね。
ただし活性酸素が体内の防御機能を破ってしまうと、逆に悪影響が出ることもありますので注意が必要ですよ。
殺菌効果もあり、ロシアでは飲用水の消毒に塩素を使わず、オゾンで消毒しているそうです。
日本でもオゾンを利用して、水の中の発がん物質(トリハロメタン)を除去していますね。
実はオゾン療法はアメリカでは盛んに研究され、学会などでも取り扱われる、確立された治療法となっています。(ヒト医学)
【犬のオゾン療法】オゾンが効くとされる病気は?

オゾンによってできる活性酸素には、免疫機能の強化や、血液の流れを良くする効果があります。
犬の全身の細胞の活性化をうながし、さまざまな病気の症状を緩和したり改善する効果があるのです。
犬でオゾン療法が使用される病気には、以下のようなものがあります。
- がん
- 感染症
- 歯周病
- 椎間板ヘルニア
- 治りにくい皮膚炎
- 高齢犬の健康維持
- 終末医療(治らない病気の緩和)
簡単に言えば体全体の調子を良くする治療なので、広くどんな病気にも使うことができますね。
よく似た治療法に、酸素カプセルに入る高圧酸素療法があります。
犬のオゾン療法の種類

どうやって使うの?
オゾンの使い方は主に3つあります。
①ガスを使う
②水にして使う
③クリームにして使う
この3つの治療法について、それぞれ解説していきます。
【犬のオゾン療法】オゾンガス療法
オゾンをガスの状態で使う治療法です。
一番ポピュラーなのがオゾンガスをお尻から入れる方法ですが、血に混ぜて体に戻したり、オゾンを皮膚に注射したりする方法もあります。
体内にガスを入れるので、全身的な病気(がん、感染症)や健康維持といった目的に使われますね。
注腸オゾン療法
一番有名な使い方で、オゾンを発生させる機械に注射器をつけ、吸ったオゾンをお尻から体に入れます。
ゆべしが最初に行った方法もこれでした。
ちなみにプラスチックの注射器はオゾンで劣化してしまう可能性があるので、ガラスの注射器を使用します。
血液オゾンガス療法
犬の体から一度血を抜き、血にオゾンを混ぜて再び体に戻す治療法です。
注意点として、血液にオゾンを混ぜる治療はよく血液クレンジングと呼ばれますが、これは正しくはないです。
血液オゾンガス療法は、あくまで血液にオゾンを混ぜる治療であって、血液の中の老廃物を取り除く治療ではありません。
オゾンガス注射
オゾンを入れた注射器で、皮膚にオゾンを打つ治療です。
局所の痛みの緩和や、治りにくい皮膚炎に使うことが多いです。
【犬のオゾン療法】オゾン水治療
オゾンを発生させる機械には、オゾンを水にする機能もあります。
治りにくい皮膚炎や、口内の歯石、歯肉炎に塗ることによって治療します。
【犬のオゾン療法】オゾンクリーム、オゾン化オイル
オイルにオゾンを溶かしたクリームを塗って治療する方法です。
皮膚や目、耳の中、口内などに塗ることで炎症を抑えたり、再生をうながしたりすることができます。
犬のオゾン療法のメリット・デメリット

【犬のオゾン療法】メリット
犬のオゾン療法のメリットはたくさん挙げられます。
- 手術が不要
- 痛みがない
- 薬を使わない
- 検査もいらない
- 費用が比較的安い
- 犬への負担が少ない
- 自然な治癒が期待できる
- 他の治療とあわせて使える
特に、高齢の犬や不治の病にかかったときには、治療方法がないこともあります。
治療ができない病気でも、オゾン療法は負担も少なく、症状を改善する期待が持てる治療法です。
終末期に苦しむ愛犬を、少しでも楽にしてあげたい時にも有効な手段ですね。
なお、費用は病院ごとにちがいますが、一般的に1回2000円~3000円前後が多いようです。
【犬のオゾン療法】デメリット
では、オゾン療法にデメリットはあるのでしょうか。
犬のオゾン療法のデメリットは以下のとおりです。
- 独特のにおいがある
- 吸い込むと肺を傷める可能性がある
- まだオゾン治療を行う動物病院が少ない
オゾンはゴムが焼けたような、独特のにおいがあります。
強い酸化作用を持つので、誤って吸い込むと肺を傷つけたり、目や皮膚にも刺激がありますが、獣医が取り扱うのでリスクは低いですよ。
最大のデメリットはオゾン治療そのものではなく、オゾン治療を行える動物病院が少ないことですね。
オゾン治療のご希望があっても、近くに行える病院がない可能性があります。
とはいえ、メリットに比べるとデメリットが少ないのがお分かりいただけますね。
犬のオゾン療法は本当に効いたのか?

ゆべしは過去15例ほどオゾン療法を使用したことがあります。
多くはない症例数ですし、すべての種類の治療を行ったわけでもありません。
(血液オゾン療法は実施したことがありません)
実施した15例の結果としては、効果があることもあれば、ないこともありました。
主に僕が行ったのは注腸オゾン療法で、10例中6例で効果あり、4例では全く変わりませんでした。
6例の回復の程度としては、高齢でほぼ寝たきりの子が立てるようになるまで回復したこともありますし、がんで食欲が全くない子が少し食べた程度といったこともあります。
残りの約5例は治りにくい皮膚炎や耳、口にオゾン水やクリームを使用しました。
皮膚炎にオゾンガス注射を行ったこともありますが、効果はあまりはっきりせず、全体的にやや改善したといった具合です。
獣医学的なオゾン治療の方法が確立していないことも、効果がマチマチな一因かもしれません。
まとめ:犬のオゾン療法は補助的に使える

ここまでの話をまとめます。
・オゾン療法は体に少しの負荷をかける治療法
・体の免疫を上げるので広く使える
・病気や目的に応じて使い分けられる
・高齢犬や終末期にも使うことができる
・まだ実施できる動物病院は少ない
・効果はあることもないこともある
最初はうさんくさいと思っていたオゾン療法ですが、実際に使って効果がある場合もありました。
海外のヒト医療では科学的根拠もありましたし。
ただ、獣医師として病気治療の第1選択にするかと言われれば、答えはNOです。
治療の基本は診断をつけて、科学的に薬を使って治す方が確実だといえます。
犬のオゾン療法の1番の長所は、薬の治療にもいっしょに使えること、投薬や手術ができない子にも行えることです。
犬のオゾン療法は補助的な治療法ですね。
もしあなたの愛犬の病気が薬で治らない場合、一度オゾン療法を試してみるのも良いのではないでしょうか。