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犬の避妊手術には腹腔鏡手術がおすすめ!メリットとデメリットを解説

腹腔鏡手術アイキャッチ画像
飼い主
飼い主
・腹腔鏡って普通の避妊手術となにが違うの?
・どっちの方が犬には楽なの?

こんな疑問を徹底的に解決します。

腹腔鏡手術の方が愛犬へのメリットは大きいです。
なぜなら、傷口が小さく、痛みも少ないから。

しかし、腹腔鏡もすべての子にオススメできるわけではありません。

当記事では、腹腔鏡手術と、従来の開腹手術(メスでお腹を広く開ける手術)を費用も含めて比較していきます。

記事を読めば、あなたの愛犬にはどちらの方法が良いのか判断できるようになりますよ。

獣医師歴14年のゆべしが公平にジャッジいたします。

それでは詳しく解説しますね。

【犬の避妊手術】腹腔鏡ってなに?

わからない表情の男性の画像

腹腔鏡とはなんぞや?から説明していきます。

腹腔鏡とは、「お腹の中に入れるカメラ」です。

健康診断で胃カメラを飲んだことがある人もいますよね。
胃カメラと同じで、お腹を少し切って中に入れるカメラを腹腔鏡と言います。呼び方が違うだけですね。

腹腔鏡を使った避妊手術の方法は以下のとおりです。

  • メスでお腹を小さく開く(2~3か所)
  • トロッカーという「筒」を差し込む
  • トロッカーから腹腔鏡や手術器具をお腹の中に入れる
  • ガスでお腹を膨らませる
  • 卵巣(や子宮)を切り取る
  • 傷を縫う

文章で読むと、とても簡単に思えますよね。

ゆべしも腹腔鏡手術の研修会に参加したことがありますが、最初は「めちゃ難しい」です。
カメラごしに手術器具を動かすので違和感があり、慣れないと視野も狭く感じます。

ガスを入れるのはお腹がぺちゃんこだと視野が狭くなり、手術がしにくい(というかできない)ためです。

通常の開腹手術は、メスでお腹を広く開け、卵巣や子宮を手で触って手術をします。
そのため、カメラごしより直感的に手術ができますし、特別難しい技術は必要ありません。

犬の腹腔鏡手術による避妊のメリット

メリットがデメリットに勝つ画像

【犬の腹腔鏡手術】傷口が小さい

犬の避妊手術では10cm以上(体格により変わります)の大きな切り口が必要になりますが、腹腔鏡手術では傷口は1か所5mm~1.5cm程度。
まったく傷口の大きさが違います。

傷口が小さいため、治りも早いです。

大きな傷口では、皮膚を縫った糸がほどけたり、場合によっては膿んだりすることもありますが、傷口が小さければその可能性も低いです。

【犬の腹腔鏡手術】痛みが少ない

避妊手術では、卵巣を引っ張ることによる痛みが一番強いです。
卵巣は靱帯(卵巣提索といいます)でお腹の中にくっついていて、この靱帯には神経がたくさん走っています。
研究論文では、この靱帯を引っ張ることにより痛みが発生し、血圧が上がることが示されています。

開腹手術ではどうしてもこの靱帯を引っ張る必要があるため、痛みが強く出ます。
しかし腹腔鏡手術では、この靱帯の上まで手術器具を伸ばすことで引っ張ることなく切ることができます
そのため、開腹手術よりも痛みを60%以上軽減できるといわれています。

痛みが少ないことにより、次の日には元気な姿を見られることが多いですね。

【犬の腹腔鏡手術】日帰り手術ができる

傷口の小ささや痛みの少なさから、日帰りで自宅に帰ることもできます
(病院の方針や、避妊手術以外の処置をしたかにもよります。)

避妊手術では、卵巣を切り取ったあとに「出血しているかどうか」の確認が重要になります。
開腹手術では、切断面がお腹の中に引っ込んでしまうので出血の確認がしにくいですが、腹腔鏡手術ではカメラで確認できます。
そのため、出血の確認がしやすいことも日帰りできる要因のひとつです。

【犬の腹腔鏡手術】他の臓器も確認・処置ができる

腹腔鏡手術では、カメラをお腹の中に入れるため肝臓や腸など他の臓器も見ることができます

太郎
太郎
開腹手術でもお腹の中は見れるでしょ?

こう思う方もいるかもしれませんが、開腹手術ではお腹の中は意外と見れません。

開腹は最小限で切るうえに、内臓脂肪に邪魔をされるのでお腹の中までは見にくいのです。

それに、腹腔鏡はなにか悪いところを見つけたらその部分を切り取ったり、ちょっとだけ取って病理検査(顕微鏡のプロに鑑定してもらうこと)に出すこともできます。

また、避妊手術だけでなく大型犬の胃を固定する手術(胃捻転という病気の予防)や、膀胱結石を取りのぞく手術などもできる、マルチに活躍する機械なのです。

犬の腹腔鏡手術による避妊のデメリット

デメリットがメリットに勝つ画像

手術の時間が長い

手術をする獣医のウデにもよりますが、開腹手術よりも時間は長くかかります

これはカメラ越しに精密機械を操作するので仕方がないことでもあります。
間違って臓器を傷つけたりすることのないよう、慎重に操作しなければいけませんし。

せっかく腹腔鏡をお腹に入れるので、見れる臓器は悪いところがないか全部見ておく、という作業も時間がかかる一因です。

費用が高い

開腹手術よりも2~3万円ほど手術料金が高くなるのが一般的です。
費用は動物病院によります。

腹腔鏡自体がかなりお高い機械であることと、使用する麻酔量が多いため、費用が高めに設定されています。
獣医からすると、腹腔鏡の操作はかなり難易度が高いので、習得までの時間や労力を考えると、開腹手術と同じ費用では赤字になってしまう切実な事情もあります・・・

ガスがお腹の中を圧迫する

腹腔鏡手術の方法で書いたように、手術の時にはお腹にガスを入れなければなりません。(気腹といいます)
が、膨らませすぎると血管を圧迫し、血の流れが悪くなってしまいます。

さらに、体内にヘルニア(開いているはずのない穴)を持っている子だと、ガスがヘルニアの穴を通ってよけいな場所まで届きます。
特に横隔膜ヘルニアなどは、お腹から心臓や肺にガスが抜けるので、心臓の血管を圧迫して危険です。

腹腔鏡手術を受ける前には、体内にヘルニアがないかのチェックも重要になります。

小さすぎる犬には向かない

腹腔鏡は、あまり小さい犬では効果を発揮できません。

なぜなら、開腹手術とあまり傷口の大きさが変わらないからです。
体が小さすぎると、腹腔鏡自体が入らない、ガスで膨らますことができないなど「使えない」パターンも出てきます。

体重〇キロ以上という目安は動物病院によって違いますが、1.5kg~2kg以上の子では、腹腔鏡が使用できることが多いようです。

トラブルがあると開腹手術になることも

腹腔鏡手術はとてもデリケートな手術です。
そのため、麻酔に耐えられない体質だった場合(麻酔をしてから分かることが多い)や、手術を開始してから小さなヘルニアが見つかったなど、予期せぬトラブルがあった場合には開腹手術に切り替えることもあります。

これは愛犬のために獣医師が最善の方法と判断した結果ですが、こういったケースもあることも承知しておいてくださいね。

腹腔鏡を持っている病院が少ない

腹腔鏡自体のデメリットではないのですが、手術ができる病院自体がまだ少ないです。

獣医師が複数いる病院でないと使えない、というのも大きいですね。
腹腔鏡は、手術中も犬の体の位置などを変える、麻酔の管理を厳密に行うなど、術者以外の人のサポートが必要になります。
そのため、大規模病院の方が導入されていることが多いです。(値段も高いし)

「腹腔鏡手術、いいかも」と思った方は、まず腹腔鏡があるかどうか動物病院のホームページで確認したり、直接電話して聞いてみてくださいね。

犬の腹腔鏡手術を受けた実際の声

ナイショ話をする女性2人の画像

Twitterでの感想

犬の腹腔鏡手術を受けた、またはこれから受ける方のツイートを紹介します。
まずは、犬の腹腔鏡を受けて良かったというご意見から。

犬の負担が少ない、回復が早い、傷が小さい、避妊手術以外にも応用できると、愛犬のことを考えるとかなり満足度が高いようです。

一方ではこんな声も。

体が小さいと開腹手術でも変わらない、もしくは使えないといった感想が多くみられました。

犬の腹腔鏡手術の注意点

注意マークを持つ獣医師の画像

腹腔鏡に熟練した動物病院で手術してもらうことです。

僕が最初にお話ししたように、腹腔鏡手術は特殊な技術で、慣れないと「めちゃくちゃ難しい」です。
それに加え、他の獣医師や動物看護師さんのサポートも通常の手術以上に重要になります。

これまで何件もの手術をこなしてきた動物病院の獣医師の方がウデも確実ですし、手術時間も短く済みますよ。
腹腔鏡手術を行う動物病院は、信頼性を出すためこれまでの症例件数を出しているところが多いですし。

腹腔鏡を持つ動物病院が近隣にいない可能性もありますが、探すのであれば熟練の獣医師を探しましょう。

・腹腔鏡手術に慣れた動物病院の方が安心

腹腔鏡手術:まとめ

手でまとめの看板を持つ画像

犬の腹腔鏡手術と開腹手術での避妊の特徴をまとめます。

わかりにくいので、比較表にしてみました。
評価は相対的にみた結果です。

  腹腔鏡手術 開腹手術
適応 小さすぎると手術できない すべての犬でOK
安全性 高い 出血のリスクはややある
手術時間 長い 短い
手術の傷 小さい 大きい
痛み 少ない 強い
他の処置への応用 しやすい しにくい
入院 日帰りも可能 入院が必要
抜糸 早い(~7日程度) 遅い(10日前後)
費用 高い 安い

犬の腹腔鏡は使用できない場合もありますが、ほぼすべての項目で通常の開腹よりもメリットが多い結果となりました。

手術時間が長い、費用が高いのが欠点ではありますが、愛犬の負担を考えると腹腔鏡手術の方が安心といえるかもしれません。

これから避妊手術を検討されている方は、参考にしてみてくださいね。

ABOUT ME
ゆべし
エキゾチックアニマルの治療施設で仕事する獣医、犬猫病院歴10年。獣医歴は14年目。犬の飼い主さんに、おうちでできるケアや治療についての記事を書いています。

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